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栃木県北から世界へ 「奇跡の缶詰」物語

今、防災備蓄品として注目を集めるパンの缶詰。今でこそ類似品も多く出ていますが、この「パンの缶詰」をゼロから研究し、生み出したのは、那須塩原市(旧黒磯市)にある「パン・アキモト」の代表取締役社長 秋元義彦さんです。この「パンの缶詰」が生まれた誕生秘話や、海外の飢餓地域を救う「救缶鳥プロジェクト」について、改めて地元の皆様にもご紹介したいと思い、お話をお聞きしてきました。

 防腐剤無添加で3年間ふわふわの美味しさをそのまま保存できる「パンの缶詰」。缶詰を開け、食べてみるとその美味しさに驚きます。 この「パンの缶詰」が生まれるきっかけとなったのは、今から23年前、1995年に起きた阪神・淡路大震災の被災者の声。 「乾パンのように長期保存ができる、やわらかくて、おいしいパンはありませんか?」 そんな声を聞いた秋元さんは、パン屋のかたすみで、100回以上実験を繰り返し、よう やく1996年にパンの缶詰を完成させました。 あきらめない心が生み出した、「奇跡の缶詰」です。
 パンの缶詰が広く知られるようになったのは、2004年に起きた新潟県中越地震。支援のために届けた「パンの缶詰」を被災した方たちが食べている様子がテレビで映し出され、大きな注目をあびました。その後、宇宙飛行士の若田光一さんが、宇宙食として宇宙へ持って行ったことで、さらに多くの人に知られるようになりました。 NASU(那須)からNASA(ナサ)へ、宇宙まで飛んでいった「奇跡の缶詰」です。
 次の課題は、賞味期限が切れた缶詰をどうするか。どうすれば作った缶詰を無駄にせずにすむだろうー。 ということでした。 2004年12月、スマトラ島沖地震の際、現地にいる知人から「賞味期限が近い売れ残りのパンの缶詰を送ってほしい。」との打診を受けたことから考え出されたのが、世界に優しさを届ける「救缶鳥プロジェクト」でした。 通常なら3年後に買い替えになりますが、期限が切れる1年前に声をかけ、新しい缶詰を届けて古い缶詰を回収することにしたのです。新しい缶詰は少し値引きもします。お客様のもとには備蓄食としてパンの缶詰が常にあり、賞味期限の近い缶詰は海外の困っている人に届けられる。これでパンを捨てることなく、みんなが少しずつ良い気持ちになれる仕組みができたのです。しかし、誰が物資を集め、回収し、配るのか。海外に送る関税コス トについても大きな問題でした。秋元さんは、問題を一つ一つ解決していきました。
 そして、2009年に始動した「救缶鳥プロジェクト」。これまで世界各地に22万缶を送っています。 そしてこの取り組みが、平成29年12月、環境省が主催するグッドライフアワードでなんと!「環境大臣賞最優秀賞」を受賞いたしました!
息子の信彦さんは、アフリカ大陸の「エスワティニ」へ同行した時のことを振り返り、「救缶鳥を手渡しした時の、エスワティニの子供達の笑顔が忘れられません。価値観が変わりました。」と語ります。「今後もパンの可能性に挑戦し、社会に広く貢献していきます。」と秋元さん。  現在、毎月最終日曜日には、きらむぎ店広場内にて、安心安全な食材にとことんこだわったマルシェも開催(12月は除く)。 「片目で地元を見据え、片目で世界を見る」という秋元さんの取り組みから今後も目が離せません。

 今回ここでご紹介しきれなかったことがたくさんあります。詳しくは、 昨秋刊行された困難を乗り越える秋元さんの足跡や人柄を軽快に描いた、勇気をもらえる一冊、「世界を救う パンの缶詰 ほるぷ出版 文/菅 聖子 絵/やましたこうへい」をご覧ください。 5年生以上対象の児童書ですが、大人の方でも十分楽しめる内容です。夏休みの読書感想文にもおすすめです。

2018年6月21日

※詳しくは、「POKUPOKU vol.6 10-11ページ」をご覧ください。

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